自作ボイスコイルモータでライントレース
概要
この記事は2019年のマイクロマウス大会ロボトレース競技に出場した際に挑戦した、「自作ボイスコイルモータを使ってライントレースをする」というロボットの紹介記事です。(割としっかりとできたので自慢したい)
ロボット本体の詳しい紹介についてはこちらの記事にまとまっています。あわせて読んでいただければ幸いです。
ロボット本体の詳しい紹介についてはこちらの記事にまとまっています。あわせて読んでいただければ幸いです。
動き
まず実際に動いている様子を紹介します。この動画のようにきちんとラインを追従できています。
VCM単体の動きはこんな感じです。VCMはユニット化してメンテナンス性を意識した設計です。8[V]で最大3[A]ちょっと流れます
VCM単体の動きはこんな感じです。VCMはユニット化してメンテナンス性を意識した設計です。8[V]で最大3[A]ちょっと流れます
ボイスコイルモータ(VCM)とは?
そもそもボイスコイルモータ(以下VCM)とはなんぞ?って方向けに説明します。
使用例
代表的な使用例としてHDD(ハードディスクドライブ)が挙げられます。HDDが動いている時に聞こえてくる「チチチチ」という音はこの画像の部品が高速に動いている音です。 いろいろなHDDをばらしてみましたが、形は多少違えど同じ仕組みのようです。仕組み
仕組みはいたって簡単で、フレミング左手の法則によって発生する力で回転させるというものです。画像の黄色い○がコイルで、コイルに流れている電流の向きを変えることで力(F)の向きを変えることができます。左右で磁束(B)の向きが違うところがミソです。詳しくは調べれば出てくると思います。なぜVCMでライントレース?
設計初期段階では、普通のブラシ付きDCモータ(以下DCモータ)をアクチュエータとして採用し、ギアで減速して駆動するつもりでした。しかし以下のような流れで気づいたらVCMを自作していました(?)
ライントレースの方式
個人的に、ロボトレース競技で主要なライントレース方法は大きく分けて2つあると思っています。センサを動かすか動かさないかの2通りです。大会上位陣のロボットを見てみるとどちらの方式も採用されているので、どちらが一概に良いということは無いと思います。ただ、筆者はロボットの設計段階で、「センサを動かした方がコースの旋回半径がセンサーバーの角度から容易に計算できる」というアドバイスを有識者の方からいただいたので、センサを動かす方向で設計をしました。
なぜVCMになった?
先ほども書きましたが、最初は普通にDCモータを使う予定でした。しかし、DCモータは一般的に細長い形をしているので、モータを縦に立てる配置は重心的に避けたいものです。ロボトレーサはただでさえ小さいので尚更です。かといって横に寝かせる配置にするとセンサを回転させたい軸と直角にモータの回転軸が位置してしまいます。こうなるとクランギアやかさ歯車といった、少し伝達効率の悪いギアを使う必要が出てきます。さらに、これらのギアは力の受け方などの問題から設計が難しいらしいです。(聞いただけなのでよく知らないけど)こういった背景から頭を抱えていたところ、別の有識者の方から「ボイスコイルモータ自作してみれば?」と言われ、VCMについて調べてみました。すると、「VCMってうまく作れば優秀じゃね!?」「おもしろそう!」となり、VCMを採用するに至りました。
VCMを採用するメリット・デメリット
「VCMってうまく作れば優秀じゃね!?」となったはいいけれども、やはり一長一短あるもので、完璧なアクチュエータではありません。VCMを使うメリット・デメリットを以下にまとめました。
メリット
デメリット
出来たもの
Ver.1
最初に作った試作機Ver.1です。磁石の強力さをなめていた結果、思い通りに動かないものができてしまいました。しかし、動くことは確認できたのでこれはこれでOK。見てもらえば分かりますが、片方の磁石が欠けています。これは磁石があまりに強力なので、思いもよらぬ距離から磁石同士が吸引し合い、くっついた時の衝撃で欠けました。
強力な磁石を使ったものを作るときは気を付けすぎるくらいがベストです。(教訓)なお、ここで使用した磁石はこれです。
Ver.3
これが実際にロボトレーサに搭載しているバージョンです。Ver.2よりも上下の磁石の間隔を狭め、磁束密度をより強力にしました。センサの可動域を広くするために、横長の大きな磁石を使っているのでこれだけでかなりの重さがあります。参考までにVCMを搭載したロボトレーサの全重量(バッテリー含む)は約200[g]です。ここで使用した磁石はVer.2と同じでこれです。
構造 表の様子 裏の様子 搭載した様子
駆動と制御
駆動方法はDCモータと同じでPWM信号を与えています。VCM専用のドライバICもあるみたいですが、DCモータと同じドライバICで駆動しています。PWMの周波数は50[kHz]です。
制御面は単純なPID制御で、制御周期は1[ms]です。
制御面は単純なPID制御で、制御周期は1[ms]です。
走行
実際にVCMを使って走行している動画です。コースは全国大会に設置してあった練習コース(同年の学生大会と同じ)です。なかなかの速度で走れていることがわかるかと思います。
まとめ
書きたいことはすべて書いた気がします。ただの自己満足記事なのでどれほど需要があるかはわかりませんが、まあ良いでしょう。ただ、VCMを自作してみて思ったのは、「頑張れば作れちゃうものなんだなぁ」ってことです。これは今後も大事にしていきたい教訓になりました。
繰り返しになりますが、この記事で取り上げているロボトレーサ自体はこちらの記事にまとまっています。あわせてお読みいただければ幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。
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